【オープンリレーションシップ】彼との馴れ初め⑨【彼と私の話】
普段の彼はよく冗談を言ったりじゃれついてきたり少年の様に無邪気な人なんだけど、この時は少年が男になったのを感じた。
おしゃべりな彼が急に黙るもんだから余計にドキドキしてしまった。
彼に抱きしめられたまま数分が過ぎたと思う。
大親友の彼には気を許しているけれど、彼とのこういうシチュエーションは先週に引き続き2度目だから慣れておらずかなり緊張。
こういうシチュエーションこそオープンリレーションシップで私が望んでいたことだから緊張しつつ嬉しくもあった。
こんなドキドキ何年ぶりだろう。
無言のまま彼に肩を引かれ、彼と向き合う姿勢になった。
彼の手が私の背中から腰にかけてを優しく撫でてくれる。
部屋は間接照明が1つ点いているだけで薄暗く、彼の顔が目と鼻の先にあるにも関わらずハッキリとは見えない。
いっそのこと前回のようにいたずらっぽく「キスしよう」とか言ってくれた方が緊張が和らいだのに彼はずっと黙ったまま。
しんと静まり返った部屋でどくんどくんと自分の心臓の音だけが聞こえた。
彼にも聞こえてただろうか。
心臓の音がこんなにもうるさいと思ったのは人生で初めてだった。
夫とはもちろん恋愛結婚だけれど、これほどドキドキすることはなかったように思う。
最初から穏やかで落ち着いていて安定した関係だった。
感情が大きく揺さぶられることがなく、それが良いと思ってた。
それは私に合ってて良かったのだけれど、ベストだったのだろうか。
沈黙の中彼と向き合っていると、ただ心臓の音だけが聞こえて時間の感覚がなくなった。
暗闇の中でよく見えないけれど、彼の顔が更に近づいてきたようで唇に鼻息を感じる。
その少し後にはゆっくりと鼻と鼻が触れ合った。
そのまま静止。
私は緊張で体が動かず、彼もそれ以上動く様子はなかった。
心臓の鼓動はどんどん早まるしどんどんうるさくなる。
脳が痺れる感じがする。
初めての感覚。
ただ横になっているだけなのに少しずつ息も荒くなってきた。
唾液が多く出てごくりと飲み込むと、彼が鼻で私の頬を撫でるように動き始めた。
その動作に我慢ができなくなった私は、自分から彼の唇を欲してしまった。
こんなにも欲望を抑えきれなかったことはない。
彼は一瞬驚いた様子だったけど、すぐにキスを返してきた。
お互いを貪るような野性的なキスがひたすら続いて脳みそがピリピリと痺れた。
つづく。